横浜の待機児童問題についてどのような印象をお持ちでしょうか?待機児童数ゼロということを聞いたことがある方もいらっしゃる一方、認可保育所に落ちたという方もいます。結論から言うと横浜の待機児童問題は東京都よりも深刻です。ここでは横浜の待機児童問題の実態をデータを用いながら説明していきたいと思います。
保育所定員増加ランキング
まずは全国自治体の2017年保育所定員増加ランキングベスト20を見てみましょう。これを見てどのように感じるでしょうか?
順位 | 都道府県 | 市区町村 | 定員増加数 |
---|---|---|---|
1 | 神奈川県 | 横浜市 | 3085 |
2 | 沖縄県 | 那覇市 | 2443 |
3 | 東京都 | 世田谷区 | 2192 |
4 | 東京都 | 杉並区 | 2161 |
5 | 埼玉県 | さいたま市 | 2044 |
6 | 大阪府 | 大阪市 | 2022 |
7 | 福岡県 | 福岡市 | 1894 |
8 | 神奈川県 | 川崎市 | 1847 |
9 | 愛知県 | 名古屋市 | 1693 |
10 | 静岡県 | 浜松市 | 1382 |
11 | 東京都 | 板橋区 | 1354 |
12 | 北海道 | 札幌市 | 1167 |
13 | 千葉県 | 千葉市 | 1141 |
14 | 東京都 | 江東区 | 1065 |
15 | 岡山県 | 岡山市 | 1044 |
16 | 京都府 | 京都市 | 1028 |
17 | 埼玉県 | 川口市 | 1014 |
18 | 千葉県 | 船橋市 | 1008 |
19 | 大阪府 | 豊中市 | 893 |
20 | 広島県 | 広島市 | 855 |
神奈川県横浜市が全国1位で定員が増加しています。さらにこの年の横浜の待機児童数は2人となっています。
これを聞く限りでは横浜市は待機児童問題に積極的に取り組んでいて、成果もしっかり出ているように感じます。
しかし、待機児童問題を利用者目線で考える場合は「待機児童数」や「定員増加数」の指標はあまり意味を持ちません。
保育所に入れない待機児童の問題の話になると、よく「待機児童数」が引き合いに出されます。
しかし、待機児童数ゼロであっても、実際のところ仕方なく専業主婦を選択した家庭もいれば、認可保育所に入れなかったケースの家庭もみられます。
こういったケースは待機児童数にカウントされません。真の待機児童ランキングを算出するためには、就学前児童数(小学校入学前の児童数)に対する認可保育所の利用児童数の割合が重要と考えられます。
つまり、保育所に入る権利がある児童と実際に保育所に入っている児童の割合が大切になります。
待機児童ランキング
それでは実際に待機児童ランキングを見てみましょう。まずは各用語の説明になります。
ここで重要になる指標は就学前児童人口率です。
就学前児童数
小学校に入学する前の児童数
利用児童数
保育所または学童保育施設を利用している児童数
就学前児童人口率
就学前児童人口のうち保育所を利用している児童の割合。数字が高いほど良く、真の待機児童割合が低いと言える。
待機児童数
子育て中の保護者が保育所または学童保育施設に入所申請をしているにもかかわらず、入所できない状態にある児童
以下が2018年度待機児童ランキングになります。東京都と比較するため東京23区,東京26市のデータも含めています。上位ほど就学前児童人口比率が低く、待機児童問題が深刻な地域と考えられます。
また、東京都内だけの比較はこちらの記事にまとめています。
順位 | 地域 | 就学前児童数 | 利用児童数 | 就学前児童人口率 | 待機児童数 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 瀬谷区 | 5495 | 1687 | 31.0% | 2 |
2 | 栄区 | 5074 | 1654 | 31.1% | 0 |
3 | 青葉区 | 15299 | 4845 | 32.6% | 3 |
4 | 磯子区 | 8097 | 2969 | 32.9% | 4 |
5 | 西区 | 4834 | 1683 | 33.4% | 7 |
6 | 中区 | 6352 | 2073 | 33.4% | 4 |
7 | 南区 | 7986 | 2880 | 33.6% | 3 |
8 | 都筑区 | 12216 | 3745 | 33.6% | 0 |
9 | 旭区 | 10749 | 3726 | 34.5% | 4 |
10 | 戸塚区 | 14203 | 5020 | 35.7% | 4 |
11 | 横浜市総合 | 178905 | 64623 | 36.1% | 63 |
12 | 金沢区 | 8311 | 3123 | 36.4% | 2 |
13 | 緑区 | 9054 | 3237 | 37.4% | 0 |
14 | 保土ケ谷区 | 8993 | 3306 | 38.2% | 3 |
15 | 鶴見区 | 15826 | 6403 | 38.5% | 6 |
16 | 港北区 | 19020 | 7598 | 39.1% | 15 |
17 | 神奈川区 | 11612 | 4765 | 41.1% | 5 |
18 | 港南区 | 8894 | 3352 | 41.4% | 1 |
19 | 泉区 | 6890 | 2557 | 42.0% | 0 |
20 | 東京26市 | 173342 | 74006 | 42.7% | 2793 |
21 | 東京23区 | 438858 | 189965 | 43.3% | 5665 |
横浜市の就学前児童人口比率は約36%に対して、東京都の就学前児童人口比率は43%です。例えば100人児童がいて東京都は43人認可保育所に入っているにも関わらず、横浜は36人しか認可保育所に入っていないことになります。
東京都は待機児童問題で騒がれることが多いですが、横浜もそれ以上に待機児童問題が深刻であると考えられます。
横浜市の対策
待機児童問題は深刻ですが、それでは横浜は今後も待機児童問題は解消されないのでしょうか?
冒頭でもお伝えした通り、横浜市は定員増加数ランキング全国1位です。取り組みはしっかり進めているということが伺えます。また、下記グラフは横浜市のデータを抜粋させて頂いたものです。
赤が保育所定員、白が利用申請者数、黒の実践が待機児童数になります。
保育所定員数は右肩上がりで増加していますが、利用申請者も右肩上がりで増加しています。
つまり対策は行っているが、それ以上に利用者が増えて追いつかないというのが横浜市の現状です。
横浜市の対策としては、さらなる受け入れ枠の拡大や、保育士確保の取り組みを掲げています。将来的に待機児童問題は解消される方向と考えられますが、東京都よりも深刻な状況なため、改善にはまだまだ時間がかかるのではないかと考えられます。
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