ハイチは長年にわたり政治的混乱と経済的困難に直面し、現在ではギャングが首都ポルトープランスの90%以上を支配しています。2021年の大統領暗殺後、治安は急速に悪化し、国際社会が介入を開始しましたが、問題は依然として深刻です。この記事では、ハイチの治安問題の背景、ギャングの影響、国際的な支援活動、市民生活への影響について詳しく解説します。
背景:ハイチの歴史的・経済的問題
ハイチは1804年にフランスから独立した世界初の黒人共和国として誕生しましたが、その後も多くの経済的・政治的な困難に直面してきました。独立後、フランスに対する賠償金支払いが課され、これが国家財政を圧迫し続けました。また、度重なるクーデターや政治的混乱が続き、安定した政府の樹立が難しい状況が続いています。2010年の地震をはじめとする自然災害が、経済発展やインフラ整備をさらに遅らせ、結果的に暴力やギャング支配の温床を生む要因となっています。
ギャング支配の拡大と影響
現在、首都ポルトープランスを含むハイチの90%以上が200を超えるギャングによって支配されています。ギャングは警察署を襲撃し、武器や装備を奪取するなどの攻撃を繰り返しています。ギャングの中でも、ジミー・シャリジエール(通称「バーベキュー」)が率いる組織は特に強力で、主要な経済道路を完全に支配し、彼の区域内では秩序が保たれています。バーベキューは自らを「人民のための革命家」と称し、腐敗した政府に対抗すると宣言していますが、彼の支配外では暴力が続き、住民は貧困と不安に苦しんでいます。
2021年大統領暗殺事件とその影響
2021年7月、当時のジョブネル・モイーズ大統領が自宅で暗殺され、国家は一層不安定化しました。大統領暗殺後にアリエル・アンリが暫定的な首相に就任しましたが、選挙が行われず正当性に欠けると批判されています。この政治的な空白はギャングが勢力を拡大する要因となり、特にバーベキュー率いるギャング連合は、統治機能の欠如を利用してさらに広範囲を支配するようになりました。
国際社会の介入:ケニア部隊の治安回復活動
2023年、国連はハイチの治安回復のために国際的な支援を要請し、ケニアが主導して部隊を派遣しました。しかし、派遣予定の2,500人の警官のうち、実際に到着したのは400人にとどまっています。ケニア部隊は、ハイチ国家警察と連携し、ギャングのバリケードを排除しながら治安回復に努めていますが、ギャングの抵抗は強く、装備や資金の不足が課題です。ケニアは600人の警官を追加派遣する予定ですが、国際的な支援の不足が進展を妨げています。
市民生活への影響とハイチの未来
ハイチ市民の生活は、暴力や飢餓の影響で厳しさを増しています。1.6万人以上の市民が飢餓に直面し、国際的な支援が欠かせない状況です。シテ・ソレイユのようなスラムでは水や電気が不足し、衛生状態も悪化しています。国際社会は治安の回復だけでなく、経済的な支援を通じてハイチの持続的な発展を目指す必要があります。ケニア部隊の活動は一歩前進ですが、真の安定にはさらなる支援と改革が求められます。
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